【第7話】 新人を短期間で戦力化する方法
- Tatsuya Sugimoto
- 2018年2月27日
- 読了時間: 8分
更新日:2月1日
社長の収益向上戦略「リーダーズ通信」より
【第7話】 新人を短期間で戦力化する方法
1.採用後、いかに短期で稼げるようにするか
●間違った考え、 間違った態度の社員を量産している現状
建築工事会社のB社では、顧客である取引先の需要拡大に伴い、急激に増える売上に対応するために、採用を増やしていました。社員、現場作業員、運転手、すべてが不足していました。
B社長から、採用した社員の教育についての相談がありました。教育のために外部の研修を活用しようかとも考えましたが、どうもそうではないという思いもあり、踏み切れずにいました。
(B社長)「今までは、社員数も少なく、徐々に増やしてきたので、社長の私が育ててきました。しかし、今のように急激に人数が増えると、しっかりと会社の考え方などが伝わっているとは思えません。また、昔の少人数の時代と違い私自身が、1人ひとりの社員と関係を持つこともできません。組織も部門別に分けて責任者に運営管理を任していますが、新人の育成が苦手な者もいるようで不安もあります」。
これは、会社が大きくなるときに、多くの経営者が感じることです。社員数が10名~15名ぐらいの規模までは、新入社員も全ての社員も見える範囲に居て、新人に仕事を教えるのは、社長本人だったり、社長の意を理解した信頼がおける社員に任せたりすることができました。
新人社員からも、社長の言動や指示の内容が側で見えるために、自然と社長の考え方を知ることもできました。ところが社員数が増え、部門に分かれると、社長も昔のように、その新入社員と話す機会もほとんどなくなります。各社員がどういう人間で、育成がどう進んでいるかが把握できなくなります。その場合の新人の育成は職場の先輩が担当しますが、この先輩が、社長や会社の考えと一緒であれば、新人は期待通りのことを教わり、それらのことを理解して育っていきます。もし、異なっていれば、間違っている事が伝わることになります。結果、間違った考えの社員、間違った態度を取る社員を、増やすことになります。
実際、B社では、今までも、新人採用がされてきましたが、一通りの仕事は覚えても基本的なコミュニケーションが取れないことが多々あり、それを指摘する人もいませんでした。結果「来訪者に挨拶が出来ない」、「作業服装は汚れていても気が付かない」、「上司に呼ばれても返事が出来ない」など、何度も指摘されないと出来ない状態なのです。
会社が求める行動が、「来社した人を見かけたら、元気に挨拶する」、「上司に呼ばれたら、ハイと元気に返事をする」というものであれば、それをしっかり伝えなければいけません。そのためには、その育成担当者や先輩社員が正しく理解し、本人たちも当然、実行できるレベルでなければなりません。たとえ、その育成担当者が技術的に優秀であったとしても、会社が期待する行動を正しく理解していなければ育成担当者自身にも再教育が必要です。そこで、育成担当者の誰もが同じ行動基準を新入社員に正しく説明する為に効果を発揮するのがマニュアルです。
このマニュアルによって、その育成担当者と、わが社の「よい社員像」「よい考え方」「よい態度」「よい品質」など、すべてを一致させることが出来ます。我が社の社員に求める事柄を紙に書き記したマニュアルがあるからこそ正しく伝える事ができるのです。それにより、この先入社して来る全員が、同じ教育を受け、会社全体としての「質」が整ってきます。そして、既存社員の再教育にも、このマニュアルが大きな力を発揮するのです。
2.マニュアルとは社員を戦力化する社長の武器
●稼げる社員として短期間で戦力化する
この考え方は、以前の号『事業は人なり~戦略的人材育成~』でご説明した管理者を機能させるための条件と同じです。基準があるから管理者として指導や指摘も自信を持って出来るのです。
マニュアルとは、社長の考える我が社の商品はどうあるべきか、そして、そのために社員とはどうあるべきかを「まとめたもの」です。会社のいたるところ、全てに、その想いを徹底します。「出社時には、元気な声で挨拶して欲しい。それにより、周囲も自分も元気にする」、「社用車の中はいつでもきれいな状態にしておく」 等、基本のマナーに関する事柄。「絶えず改善意識を持って業務に当たること」、「おかしいなと少しでも感じたら、すぐに上司に相談すること」などという心構えに関すること等、会社としての理想とする事柄があります。その理想とは、社長や会社が今まで多くの経験をしてきた結果から編み出したものです。
今の事業において成果を出すための、最もすぐれた態度であり、心構えであり、実務手順であり会社の財産です。これを、しっかり残し、伝えていくことが必要になります。その中心となるのが、マニュアルです。マニュアルとは、ただの「作業手順書」という認識では、本質を全く理解しておらず、その価値の多くを活かせられないことになります。
マニュアルの有効活用により、新入社員は、早く作業ができ、早く正しい態度を身につけることができるようになります。そうすればおのずと早く成果が出せるようになり、顧客からも喜んでもらえます。このようにマニュアルの活用は、社員を短期で戦力化し、実践で稼げるようにします。
3.教育は重要だが、それ以上に優先順位が大切!
●「守・破・離」は育成の基本
新たに採用をされた社員は、まずは決められたことをしっかりできるようになることが必要です。決められたことができれば、整備された仕組みの上で、すぐにその作業なりの成果を出すことができます。組織に整備された人材育成の仕組みがないと仕事の習熟スピードは必然的に遅くなり、生産性は低度な状態となります。しかし、マニュアルと訓練の体系という仕組みにより、すぐにできる仕事をつくり出し、その日から成果を生み出せるようになります。
そして、基本が身についてきたら、「判断が必要となる業務」や「状況や相手に合わせて対応する仕事」ができるように、次の応用の段階に入ります。クリェイティヴや接客が主となるサービス型事業では、 この判断する業務や対応できる業務を社員ができるかどうかが勝負となります。そのためには、社員を、この2つの過程を経て一人前としていきます。この2つの過程は、明確に区別する必要があります。先の、決められたこと(作業・態度)ができるようになる過程を「訓練」といいます。後の、状況(目的・相手)に合わせて応用できるようになる過程を「教育」といいます。
まず、訓練により、しっかり基本的な作業や態度を身につけさせます。そして、それができたのち、教育により、考えて応用ができるようになってもらいます。この順番が重要なのです。仕事だけではなく、スポーツでも、習い事でも、人が何かを身につけるときには、必ずこの順番になります。
この段階では、まだ応用などは関係ありません。指導者は、きちんとその基本を身につけさせます。その基本ができていないと、この先の大きな成長は望めないのです。基本の徹底、その繰り返しにこそ上達があり、その過程によって「人」としての基本が身に付いてつくるのです。
そして、数年を経て、基本が固まれば、「自分の特徴や強み」や「相手に合わせた戦い方」という応用を自ら考え実践できるようになり、やがてアレンジも加え1人前の仕事が行えるのです。
これは、「守・破・離(しゅはり)」という言葉でも表されます。訓練から教育、この流れが絶対に必要です。基本ができていないうちに、応用もアレンジもありません。
採用した社員に、決まったことを教え、まずはその通り行ってもらうこと、そのための訓練の仕組みが必要です。その基本ができていないと、かえって育つのに時間がかかることになります。基本が身についてきた上で、 考える仕事もしっかり与えていくことが必要です。
業務の改善、マニュアルの更新、企画書の作成など、考えないで済んでしまう状況を許してはいけません。毎日、単調な作業を繰り、返すだけでは、その状況に慣れ切って、考えるという力は弱くなります。
また、その本人も、手を動かすことや指示されたことをこなすことが、仕事という意識レベルになり下がります。訓練と教育、これを区別し、基本的な訓練の習塾を経て居幾行うという仕組みを整備し、しっかり運用していく必要があるのです。
《まとめ》
①中小零細では育成担当者や先輩社員は、日頃の仕事に加えて、部下育成というイレギュラーの仕事が発生する。ただでさえ日常の仕事に追われて、その上教育は彼らの負担となり、戦力化を遅らせる。
②マニュアルの作成は、業務の効率化、定型化、標準化のために重要だということは、知っていても、マニュアルが会社にとって、どのような位置付けで、どのように定義付けられるものなのかまで考えて、作成、運用している会社は少ない。
③育成は、「守」で会社組織の基本屋やルールを学ぶ。「破」で他の先輩が教えてくれた良い点を吸収。そして「離」で自分の仕事術を確立する。
※「急がば回れ!」御社の教育訓練を再度見直し、独自のマニュアルを作成して教育訓練システムを構築しませんか!
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有限会社リーダーズ愛媛
代表取締役 竹田 富男(たけだ とみお)
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