top of page

【第3話】 事業は人なり ~戦略的人材育成~

  • 竹田 富男
  • 2018年2月27日
  • 読了時間: 8分

更新日:2月1日

社長の収益向上戦略「リーダーズ通信」より

【第3話】 事業は人なり ~戦略的人材育成~

1.「人」という経営資源には、無限の可能性がある

 企業活動における4つの経営資源は、人、モノ、金、情報と言われます。中でも人をどう活かすかが繁栄の成否を分けると言っても過言ではありません。

 松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助氏はこう述べています。「松下という会社は何を作っているのかと聞かれれば、人を作っている所だと答える。そして併せて商品も作っている所だと」。まさに経営の本質です。

 人の重要性は、人という経営資源が他の経営資源と根本的に異なり、その能力や可能性に無限の広がりがあることです。モノ、金、情報の価値は基本的には一定ですが、人の価値はやる気や能力、感情などによって大きく変動します。人が持つやる気や潜在的な能力を引き出すことが競争力に直結するのです。

 目標を立てて、戦略を考え、実行していくのは、組織を構成する[人」であり、最終的に生産性を決めるのは「人のマネジメント力」です。

 事業を起こすと、社長1人か複数名でスタートし、やがて売上も増えて、人手も必要になり雇用します。社員数が10名前後なら社長の目も届く範囲ですが、社員数が20名、30名と増えるにしたがい、もう社長の目は全てに届かなくなってくるので、社長を支える管理者が社長の代わりに各部門の指揮を取ることになります。

 そこで専務や常務、部門長、マネージャーをはじめとする管理者に権限を与え、社長の分身として、その業務の範囲内で意思決定を委ねることになります。

 管理者の戦略実行力が高いと、効果性のある意思決定が部下にダイレクトに伝わりますので、良い結果に結びつきます。現場からのフィードバックもダイレクトに管理者に届き、スピーディな判断もできます。

 私は20年以上、収益向上コンサルタントとして、企業の優先課題ともいうべき人材教育・組織開発に関わるなかで実際の経験上、業績が伸びている会社のカギは、管理者にあると確信しています。良い人材、管理者がいる組織は、業務遂行能力や問題解決能力にも優れ、業績向上という形になって必ず成果が出ているのです。

●管理者は“偉さを表している”訳ではない。

 管理職は“役割”であるため、まず会社が期待している役割を明確化しないかぎり管理職としての役割を果たしようがありません。

 管理者は、人やお金という限られた資源を最大限に活用しながら会社が目指している目標を達成することが重要な役割であるため、メンバーの育成に興味のない人、投資効率や効果を考えることが出来ない人、施策を具体的な行動レベルに落とし込もうとする意欲が欠如している人を管理者に選ぶと、期待してもチームの生産性は上がりません。

 社長は間違った管理職を選んだ代償として会社の将来を危うくする可能性があることを理解すべきです。もちろん、将来の経営層になりうる可能性のある人材を選抜できたとしても、その人たちを育成できるかどうかも大変重要な課題となります。

2.管理者が機能しない原因

《事例》 社長のパワーで事業を引っ張ってきたが、いまの文鎮型(社長+あと横一線)の組織ではこれ以上無理ということで、営業部門と製造部門、それぞれに管理責任者を任命することにしました。任命した社員は長年勤務してくれて仕事振りも真面目で現場作業を安心して任せられることもあり管理者に選びました。

 しかし、管理者に任命したものの、彼からは管理者らしい発言や行動も無く、積極的に業務を改善することもありません。また、何度も、その社長は「管理者として」「管理者らしく」と話をしたいましたが…。社長の役目も管理者の仕事も、任命前とほとんど変わらず、今も社長が全体を直接指揮しています。

 このケースは、会社が成長する上で必ず通る道です。現場の仕事は出来るが、管理者がチームの管理責任者として機能しない、これの理由は明確です。その原因は大きく2つあります。

原因その1.『基準がない』

仕事のやり方やそのポジションの役目など、新人管理者には何の基準も無い。これまで社長が自ら、目についたところを注意し、改善してきたが、社員を管理者に任命したからと言って、その社員に、それと同じことは出来ません。

 昨日まで自分と同じ社員や自分より年上の人も居る中で、彼らが部下となった社員に管理者として物申すことは、とても気を使うのです。社長は「俺がルール」で押し切っても、管理者はそうは行かないのが現実です。自分の基準で部下に接すると次第に反発する者も現れ、チームを統率していくのが難しくなっていくのです。

 例えば、サッカーや野球チームのコーチは、監督の方針から外れることは指導できません。

 戦略方針、権限、役割責任など明確な基準があるから指導が出来るのです。

原因その2.『管理者の役目がわからない』

昨日まで、彼らは、いち従業員でやってきました。長くやってきてある日、管理職に任命されました。ベテラン職員=管理職? 腕が良いから管理者に任命された?

 社内に、参考になる管理者はいません。社長の動きは、社長だからできる動きですから参考になりません。管理者は管理者としての役目がわかっていなければ、動くことはできません。

 例えれば、新規採用した人に「自分で考えて働いて成果を出してみて!!」という状態と同じです。これらの原因はどれも繋がっています。すべての原因は、仕組みや組織化の問題なのです。

 よくある研修会社の管理者研修に参加させただけで解決する問題ではありません。「仕事のプロセスを“視える化”する」「基準をつくる」「管理者の役目を伝える」この取組みすべてが必要です。どれか一つ欠けてもダメです。それらの構築が完成すると、ようやく管理者が機能するようになるのです。

3.管理者の仕事は大きくは二つあります。

(1)与えられた目標の達成

 今期の売上目標の達成。顧客の要望する品質や納期を守り製造し納品するなど。自部門に与えられた目標を達成するために、その方針戦略を考え、計画を立て、役割を分担調整し、実行していく。進捗を確認し、課題があれば対処し、修正を加える。

(2)改善し、仕組みとする

 現状の仕事のやり方で満足することなく上手く、より早く、コスト・経費を低く、より正しく遂行するためのやり方を考える。実行し、上手くいくかどうか確認する。上手くいったものを、基準にし、組織のノウハウとして残す。他のメンバーが出来る様に指導する。

 管理者はこの二つの役目を全うする過程で、責任感が生まれ、能力も格段に上がります。管理者は、目標を達成するために何が出来るかを考え続け、現場での検証や、その考えを持って社長と意見交換をします。

 今までの現場作業の延長戦ではなく、管理者としての能力が開発されて行くのです。この二つは、管理者の仕事ですが、私が支援させて頂いた会社が収益向上と成長サイクルに乗れたのは、この2本柱があるからです。

 会社は、次の2つのサイクルを持つことで、確実に毎年成長をしていくこと出来ます。

①経営計画(書)をつくり、その達成のためにPDCAを回す。

②業務を文章化(マニュアル)にまとめ、会社のナレッジ(知恵)にする。

 逆にこのサイクルのどちらかが無い、どちらも無い会社は行き当たりばったりの判断をします。そして、同じ問題が何度も起きます。順当に成長をすることは有りえません。社長は、このサイクルを社内に構築し、何としても回すことです。

 このサイクルを回すために社長は、管理者にこの二つを仕事を与え、このサイクルを管理者主体で回せる様にする必要があります。

 そのためには、まずは、現在社長一人で回しているものを、管理者を巻き込み社長と管理者で回せる様にするのです。

4.管理者を経営に巻き込むことが最高の育て方

(1)期末に経営計画(書)を管理者と一緒に作成する

 管理者に作成の段階から関わらせることによって、このサイクルは社内(全社員)に根付きやすくなります。この取組みをはじめるのは、早ければ早いほどいいでしょう。社員が数名の会社なら、まずは社長と頼りになる社員だけでもいいし、数十名の会社なら、部門別、業務別などの階層でしっかり課題を擦り合わせて作成することが大切です。

(2)毎月、その月の進捗の確認と来月の予定を確認する。

 作成した経営計画書を達成するために、毎月、社長は管理職者と一緒に進捗を確認し、方針や策を議論し意思決定を行います。そのために、毎月の末にはしっかり会議を開催します。

 これを回すことで、毎月、確実に会社を変えるための行動が行われます。管理者は日々の業務の中で徐々に頭を使い出し、社長に前向きな意見を言ってくれるようになります。

(3)目標を達成するために改善した業務、新たな方針などを、自社の基準(書面)とする。

 改善した業務や決定した方針も、何かに残されていなければ徹底されることはなく、また時間が経てば、同じ問題が起きてきます。組織が経験し生み出した、より効率的なやり方や考え方(方針)を、書面にまとめ、社員に周知します。また、今後入ってくる社員を育てる訓練基準にします。

 この基準(書面)を決定するために、社長と管理者は議論し決定します。また管理者を中心に部門内で話し合い、提案をしてもらうことも大切です。これを繰り返すことで、どんどん業務が改善されて行きます。これを進めることで管理者や社員も手を動かすだけでなく、仕事に対する前向きな問題意識を持ち、改善しようと努力するようになります。

 社長は、このサイクルを社長と管理者で回すことで、どんどん会社がよくなるイメージが持てます。そして、この過程で社長の考えを理解し、自らの頭で考え、意見し、行動する管理者が育つのです。このサイクルを回すことが一番の管理者教育になります。

これこそが強い会社と言えるのです。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

有限会社リーダーズ愛媛 

代表取締役 竹田 富男(たけだ とみお)

HP:https://www.leaders-ehime.com/

Eメール:t2@world.odn.ne.jp

住所:愛媛県松山市清水町4丁目75-1  

TEL:089-922-9423

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

Comments


特集記事
後でもう一度お試しください
記事が公開されると、ここに表示されます。
最新記事
アーカイブ
タグから検索
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square
図書館の本棚

©1991-2025 リーダーズ愛媛

bottom of page