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【第10話】ローテーション出来ない会社は問題が多い!

  • 執筆者の写真: Tatsuya Sugimoto
    Tatsuya Sugimoto
  • 2018年6月21日
  • 読了時間: 8分

更新日:2月1日


1.タイヤのローテーションと組織のローテーションは同じ!


 車に装着されているタイヤの位置を交換する作業をタイヤローテーションといいます。タイヤは装着されている位置によって摩耗の仕方や進み方が異なるため、摩耗の状況を均一にするには定期的なタイヤローテーションが必要になります。

定期的にローテーションをすることで、異常な摩耗を抑制し、タイヤを長く安全に使用することが出来ます。

 それと同じように会社組織も、人数が増えてくるに伴いローテーションを行います。「営業担当を、企画部門に移動する」「開発部員を、製造部に移動する」など、このようなローテーションは、多くの利益を組織に与えてくれます。

 ローテーションの効果は、「社員の育成」を目的にされますが、その第一の目的は、「組織の正常化」にあります。組織化を進めると言うことは、絶えず組織病との戦いになります。その組織病は、やがて「顧客第一主義の喪失」や「セクショナリズム(部門間で協力しない)」という病状を引き起こします。その抑制の一つの手段として、ローテーションを行うのです。

 例えば、「営業担当を、企画部門に移動する」、それにより、次のような効果が期待できます。

・企画部門に営業の現場を解った人間がいることで、現場の課題や顧客の要望を取り入れやすく

なる。

・営業という顧客視点で考える入れることで、内部(スタッフ部門)は、顧客第一を取り戻せる。

 また、「仕組みづくり」においても大きな効果を発揮します。ローテーションをするということは、必ずそこに「引継ぎが発生する」ことを意味します。そのため、その「引継ぎ」に伴う効果を自動的に得ることが出来ます。

・日々の業務を後任者に引継ぐ前提で行う。そのため、データベース化、マニュアル化を進める。

・また、移動日が近づくと、集大成としてのマニュアルの見直しと更新を行う。

・新たにその業務に就いた者は、「客観的な視点」と「自分の経験」から課題を発見し、改善することになる。

 このようにローテーションにより、「仕組み」も、大きく育つことになります。ローテーションのサイクルを持つことは、「仕組みの改善や活性化するサイクルを持つこと」を意味します。

 また、それは、そのまま「属人的な業務の進め方」を廃絶する力になります。その結果、「隠された問題が発覚する」「不正の防止」や「ある1人への業務集中というリスクの回避」という効果を得ることになります。

 これらの効果を期待して、大企業では、どの業務(社員)も、3年ほどのサイクルでローテーションを行っています。逆に言えば、「ローテーションが行われない」という状態では、組織病を引き起こしやすい状態を放置していると言えます。

 そして、「仕組みの改善」も進まない、また「不正が起きやすい」という状態です。当然、人材育成という面でも、慣れきった状態に留まった社員は、「成長が遅い」ということになります。

 また、誰かが出て、誰かが入ると言うことは、そこには新しい人間関係の再構築が必要になります。新しい人はどういう性格の人なのか、いい人なのか?、どういう能力を持った人なのか、有能な人なのか?「外れ」もそれなりにあります。当然、その部門内の仕事のやり方やパワーバランスに影響を与えます。その人が上位職者であればあるほど、その影響は大きくなります。

 人の入替えにより、新たな「刺激」を起こし、「緊張状態」をつくり出しているのです。それにより、部門内の雰囲気に「新鮮さ」を保つことが出来ます。この「刺激」がないと、「新鮮さ」は失われることになります。

 あげくに、そこには「楽(らく)」がはびこる事になり、「怠慢」という態度が見られるようになります。その結果、「会社や上司への不満」や「顧客を軽んじる」という悪い風土が育ってしまうのです。

 そして、特に優秀な人材は、次のような状態になります。

・優れた人材に業務が集まり、多忙を極める。本人は、周囲との業務量の違いに気付いている。

・日々の業務は多忙であるが、発展のない業務に飽きてくる。

・不効率な業務の進め方はいつまでも改善されず、この先も変わらないと感じる。

・また、自分の上司や周囲の顔ぶれは何年も一緒。この序列は、今後も変わらない。

・この状況が続くと思うと「この会社に定年まで勤めるより、もっと自分を活かせる仕事(会社)が他にあるのでは?」と考えてくる。

 その結果、優れた人材は、この状態に見切りをつけ、自分の能力を試せる新天地を求め去っていくことになります。

 実は、このことで会社に与える影響が、どれほど大きいか、私は多くの社長から話を聴いてきました。

 例えば、仕事(受注)を取ってくる営業マンの退職で・・・「その後の売上が低下した」「ライバル会社へ転職し、そちらに顧客が流れた」「顧客を持って独立する」など。スキルの高い技術者の退職で・・・「品質にバラツキが出る」「生産性が低下する」「ロス率が増えた」「ライバル会社にノウハウが漏れた、そちらに顧客が流れた」「独立して競合先になった」「その後の売上に影響する」など。

2.ダメなローテーションとは

 ある製造業の社長からの相談です。

(社長)「ローテーションした社員が、1ヶ月後に辞めたいと言ってきました」

 この社員は、製造部門から営業部門への移動ですが、業務は既存客をフォローする御用聞き営業です。社長は、この社員の製造部で得た詳しい製品知識を活かして既存客への一層のサポート強化を考えましたが、それに反して退職を願い出てきたので社長からは驚きと落胆が伺えました。

 私は、この会社が、まだローテーションが出来る状態に無い組織体制だと考えました。この会社の社員数は当時40名近くになっていました。そのため、会社の成長と共に部門間のセクショナリズムという縄張り意識が発生していたのです。

 自分の属している部門やチームの権限、利害、都合、立場などに固執し過ぎるあまり、他部門に対して無関心や非協力的、否定的といった態度を取ってしまう思考傾向がありました。社長自身もこの状態が次第に強くなってきている事に不安を感じていました。

 そのため社長は焦っていました。その焦りから、ローテーションの実施に踏み切ったのでした。ローテーションをすれば、「引継ぎ」のために、仕組化が強制的に進むだろうという期待からです。この考え方自体は、間違っていません。

 しかし、ローテーションがスムーズに行える下地として、ある程度の「仕組み」があることが前提となります。

「仕組み」があるからこそ、ローテーションが可能となるのです。仕組みが無い状態でのローテーションは、当然、混乱を招くことになります。

例えば、

①顧客情報や在庫情報が一元化されたデータがない。

②情報の経路や部門間のやり取りが、もともと機能的ではない。案件が増えれば、混乱。

③業務のマニュアルがなく、「標準」がない。

 このような状態では、スムーズな「引継ぎ」は程遠いものとなります。スタッフが他部門で経験があると言っても、全く違う仕事を担うわけですから異動の直後はほぼ「新人」状態に逆戻り。

 本人も慣れるまで全力疾走はできませんし、周りも教育・指導に時間を取られます。引き継ぎがうまくいかないと業務が一時的に停滞することになります。対外的にも「担当者が変わって、どこまで話が進んでいたのか分からなくなってしまった」など迷惑をかける恐れもあります。

3.ローテーションの「仕組化」

ローテーションにより戦略的・計画的に人事異動を行う事が大切な大企業においては、このローテーションの「仕組化」は、真新しい取り組みではありませんが、中小零細企業では人員数も多くて数十名、現場作業を処理することで一日の仕事が終了する状況で「仕組化」など、到底望めない会社が大半です。

 しかし、今では経営環境の速い市場に対応するために効率や生産性を求めるのであれば、中小零細企業ほど一部の社員に限らず幅広い社員をローテーションの対象として、柔軟性・視野の広さを身に着けてもらう必要があります。

■適材適所の発見

 企業にとっては、採用時の面接などからは社員の向き・不向きがはっきり分かるものではありません。社員にとっても、自身の希望と実際に向き合っている業務が一致しているとは限りません。様々な部署を実際に経験するなかで、その人に向いている職務をみつけられれば企業にとっても社員にとってもメリットがあります。

■人材確保

 人手不足社会の昨今では、ローテーションによって成長を支援する仕組みを確立し、アピールすることは、人材を会社に集めるための方策としても活用できます。それには2つの意味があります。

 1つ目は、新卒募集の際に会社の教育・研修制度としてアピールできる点です。社会経験のない新卒の中には、自分がどんな仕事に向いているのか明確に見えず、希望業界・職種を絞り切れていない学生も多く見受けられます。自分の向き・不向きの部門を入社してから探したい学生にとって、「いろいろな仕事を経験できる」会社は魅力的に映るのです。

 2つ目は、社内の人事に柔軟性を持たせ、制約のある中でも社員がより働きやすい環境を整える点です。出産・育児や介護などで働ける時間や場所に限界がある社員が増えるなか、それぞれの社員の専門性が高すぎると「その人がいない→仕事が回らない」状態が発生し、当人も周りも疲弊してしまいます。

 一方、部門をまたがって異動するシステムがあれば、欠員の穴埋めも容易で、当人も制約のある期間だけ別の部署で働くことができます。

《まとめ》

①部署間の敷居を低くすることで、社内の風通しをよくする効果もあります。同じ部署内だけで人材が固定すると、新しい発想が生まれなくなったり、悪い意味で慣れ合いが起きたりします。最悪の場合、不正を互いに黙認するような文化さえ生まれかねません。

②経験を積みながら社員の適材適所を図れる。

③人材不足の中小零細だからこそ、仕組化で人材確保を有利にする。

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有限会社リーダーズ愛媛 

代表取締役 竹田 富男(たけだ とみお)

HP:https://www.leaders-ehime.com/

Eメール:t2@world.odn.ne.jp

住所:愛媛県松山市清水町4丁目75-1  

TEL:089-922-9423

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