【第4話】 考え、行動する組織をつくる
- 竹田 富男
- 2018年2月27日
- 読了時間: 7分
更新日:2021年3月4日
社長の収益向上戦略「リーダーズ通信」より
【第4話】 考え、行動する組織をつくる
1.事業と建築
建設物をつくる際には、必ず完成図面があります。そして、その完成を目指して計画を作成し、それに合わせ、工事を進めていきます。その工事の実行の多くを、外注業者に依頼します。大きな工事では外注業者の数は数十社、作業員は数百人となります。そして、その進捗を現場監督が定期的に確認し、必要であれば修正を加えながら1つひとつ進めていきます。その結果、大きな建設物が完成できるのです。
事業経営においても、経営計画書という設計書を作成します。そして、それを実現するために計画を立てます。それを持って、各部門に対してその実行と実現を依頼します。会議などでその進捗を確認し、その時々に起きる間題を解決し、1つひとつ進めていきます。それにより、社長の描いた構想は、現実のものとして作られるのです。
●考え、行動し始める組織
当社のクライアントである企業では、毎期のスタートを全社員で今期目標の達成とそのための解決すべき問題や課題、コスト削減、商品戦略、競合戦略、販売戦略、そして新たに取り組む事業モデル等、社長と部門管理者と一緒に検討の段階から経営計画書の作成を行っています。その経営計画書には、「意思決定したこと」や「想定される問題」など、全てを残していきます。
しかし、実行計画を作成し、その計画に沿って進めていますが、当然、全てが思惑どおりに進むことはありません。どんな図面でも、1度で完成することはありません。それどころか、何度も書き直すところに意味があります。その何度も書き直すという過程があることで、練り上げられ「確信」に変える事が出来るのです。また、経営計画書を作成していると、計画の遅れが発見でき、早期の修正が可能となります。
2.毎回、社長の指示がなくても成長する組織とは
経営計画書による経営、仕組みの整備、これらを進めるという事は、今までの属人的なやり方を否定し、組織としての仕組みに変えるという事です。つまり、全ての業務や情報を全員に「見える化」します。それにより以前は気付かなかった組織の問題(人材の資質や能力・設備基盤・オペレーション・資金の回し方・個々の保有情報、他)や解決すべき課題も見えてきます。
今までも、その問題は間違いなく存在したが、「見えなかった」ために、スルーされてきたという状況です。問題がスルーされることにより社長の目の届かない所で、有形無形の損失(一例:モチベーション喪失、意欲人材の退職、材料・時間・生産ロス、コスト増、顧客不満足、顧客流出、不良債権化、横領、のれん価値の低下、派閥、部門間の壁、危機管理能力低下、他)が発生しています。
しかし、社長と管理者が、これらの問題や課題を解決し、最適化する過程で全ての業務に基準が出来るようになます。よって生産性も大幅に向上するのです。そのようになれば、社長が全ての部門、業務に対して一々指示を出さなくても現場は効率的に回っている状態になります。
●組織のレベルを図る4つの基準
社長の陣頭指揮が行き渡るのは、目の届く少人数の組織までです。これが数十名になると各部がしっかりと「分業」の機能を発揮することが必要です。当然、その分業のレベルは「ただ作業をこなす」だけでは生産性は上がりません。
社員数が数名の頃のように、社内で、「社長1人が頭を使っている」状態や「指示を出すまで動かない」という状態ではいけません。社長1人のパワーで引っ張るには限界があります。この先に進むためには、社員が考えて行動する組織として機能することが重要になります。
それは、組織が何をすれば「安定した商品(サービス)を提供し、売上を高め・利益を増やすこと」「社長の描いた経営計画の実現のために、どう行動し、成長を続けるか」を考え行動する必要があります。
次に組織活動のレベルを測る基準。そして、機能を得るために必要な構築すべき要素について説明をします。その機能とは、大きく次の4つとなります。この4つの基準と自社の現状を比較することで、現在の組織レベルを判別することができます。これらの機能を持たないと、それぞれを原因とした問題が現れます。
まず「レベル①」の「決められた手順」が出来ていない組織では、日常の業務が仕組みとして流れていない状況です。「行う手順が決まっていない」「業務の流れが不明確」「業務が属人的」、そのため「業務量が増えれば混乱する」「商品(サービス)の質にバラツキが大きい」という間題が起きます。この状態に対しては、マニュアル化などの取組みを行うことになります。
そして「レベル①」の「決められた手順」はできているが、「レベル②」の「判断する業務」ができていない組織では、次の現象が起きます。「お客様からの要望などで想定外の対応が必要」「発注業務など判断が必要だったりする業務」の場合には、自分たちでは判断せず「すぐに指示を上司に求めること」になります。
但し、この状況が当たり前になってくると些細なことでも毎回指示しないと業務が回りません。この場合の指示者は社長や一部の出来る社員になります。そのため、その人は頻繁に指示を出すことになり、その人がいないと業務が上手く回らない、代わりが利かないという状況になります。
これを改善するにはマニュアルを活用することが有効です。マニュアルには業務の目的や範囲など、判断の基準となる方針書を明記します。それを使用することで現場は自分たちで考えたり、応用したりすることが出来るようになります。
しかし、マニュアルに関する課題もよく聞きます。「作成したが、実際にその通り行っていない」「どれが最新かどうか解らない」「マニュアルが更新されない」など。本当の問題は「マニュアル」や「作業手順」を活用するシステムその「運用」にあるのです。
サービス的な要素の多い業務では、社員が相手(お客様や関係者)を思いやる柔軟な対応が勝負となるため、「レベル②」の現場が自ら考え状況に応じて判断することが必要になります。
次の「レベル③」と「レベル④」が、管理者層が主となり推進する業務となります。
「レベル③」とは、「仕組みの改善」を指します。管理者が中心となり、各部門が受け持つ業務の改善に取り組みます。
例えば、営業部であれば「営業管理の仕組みを導入すること」や「提案書のフォーマットをリニューアルする」、製造部であれば「設備のレイアウト変更」や「在庫管理の仕組み」「不良品の撲滅」「生産性の向上」などがあげられます。管理者が改善する目標を部下に割り振り、その解決の大まかな方針を示します。その上で、具体的に検討の方法やスケジュールを確認しない限り、進むことはありません。改善活動を永続的に行うことにより、現場での業務はさらに生産性を上げることになります。
この仕組みが出来ていない組織は社長や一部の優秀な社員のみが考え続けることになり、問題に対する対策は、その場しのぎや根本的な解決がされないために、時間が経過すると再発することになります。
そして、「レベル④」とは、各部門が与えられた目標達成のために考え判断し行動する「P(計画)・D(実行)・C(検証)・A(改善)」のサイクルを回している状態です。
管理者は、自部門の目標達成のために、部下の能力や仕事量を考え役割を与え、行動レベルまで落とし込みます。そして、その進捗を確認し、必要であれば修正をします。
《まとめ》
①大きな建物の建築同様、事業にも事業設計書が必要。完成に向けての計画を立てる。その書面を持って、各部に対して実行と達しを依頼する。その進捗を確認し、修正を行う。これにより社長の描く構想は現実のものとなる。
②各部門が与えられた目標を達成するために、考え行動していること。また、課題を発見し、その改善を続けること。その状態を生む仕組みをつくる。
③マニュアルにより、決まった業務を安定してできるようにする。方針書により現場や相手に応じて判断できるようにする。
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有限会社リーダーズ愛媛
代表取締役 竹田 富男(たけだ とみお)
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